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スルガ銀行誕生秘話

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平成23年5月5日
題名:「スルガ銀行誕生秘話」



江戸時代に生まれた二宮金次郎が次々と農村や藩を復興させ、多くの人を貧困から救ったことは知られているが、この金次郎の復興の仕手(しほう)をそのまま真似して誕生した銀行がある。それは静岡県沼津市に本社を置くスルガ銀行である。

スルガ銀行は静岡県と神奈川県を地盤とする地方銀行(本社沼津市)であるが、そのルーツは災害と大きくかかわりがある。

1884年(明治17年)9月に駿河地方を未曾有の暴風雨が襲い。鷹根村(現静岡県沼津市)は甚大な損害をうけ水田はまるで海水を被ったように枯れてしまい、農村はたちまち飢饉地獄に追い込まれた。見渡す限り田畑にネズミ一匹いない惨状でいつ餓死者が出てもおかしくない状況であった。

この窮乏とした村を復興しようと一早く立ち上がったのが若干20歳の岡野喜太郎(おかのきたろう、1865年~1965年)という青年で現スルガ銀行の創設者である。災害当時は師範学校に在籍していたが村の惨状を目の当たりにし、学校を辞めて復興の先頭に立ち上がることを決意した。

復興を手掛けるにあたり、まず岡野の頭に浮かんだのが、小田原の出身で、幕末に関東、東海など600余町村の財政を立て直した二宮金次郎(1787~1856年)であった。

金次郎は、天保の大飢饉に際して、静岡県の駿州御厨村(すんしゅうみくりやむら)(現静岡県御殿場市)と藤曲村(ふじまがりむら)(現静岡県駿東郡小山町)を見事に立ち直らせた実績があった。その仕法は一村の全農民に、縄一房(なわひとふさ)の代金5文を、毎日毎日欠かさずに積み立てさせて、個人を含めて村全体の財政再建をさせる「小を積んで大を致(いた)す」方法であった。金次郎の代名詞ともいえる積小為大(せきしょういだい)の実践である。

岡野は鷹根村もかつて金次郎が指導して見事に復興させた村も同じ駿東郡内の村なのだから金次郎の「小を積んで大を致す」方法でやってみようと思ったのだ。

岡野は皆の先頭に立ち農業に励む一方、天災は前触れなくやってくるのでその時に困らないようにするため金次郎の仕法をお手本に、日頃から少しずつ積み立てて蓄えておくことを実行した。それを自分一人で積み立てるのではなく村全体で積み立てた。村人たちに働きかけ一人月掛10銭(現在の3千円位)の貯蓄組合組織を作った。これがスルガ銀行の母体となり、1895年(明治28年)、岡野の手により現在の静岡県沼津市の片田舎の農村に資本金一万円の日本で一番小さな銀行が誕生した。設立目的が「天災と民禍の克服」「貧しく荒んだ郷土の救済」であり、創業の精神が「小を積んで大を致す=勤倹貯蓄」であった。岡野31歳の時であるが豪商でも事業家でもない一農村の青年が銀行を設立したのは異色であった。

岡野は93歳で長男に頭取の座を譲り渡して会長に退くまで銀行頭取在位62年間の大レコード記録をつくり1965年(昭和40年)老衰のため101歳で永眠したが、その間、創業の精神である「小を積んで大を致す=勤倹貯蓄」を行内だけでなく世間にもずっと推進してきた。このことが評価され(1959年)昭和34年、内閣総理大臣より国民貯蓄運動の功績抜群として表彰される。

また、創設者のDNAは今もスルガ銀行に脈々と受け継がれている。嫡男で第2代頭取の岡野豪夫は、篤実な人柄で、創設者の喜太郎が提唱した「勤倹貯蓄」と「社会貢献」の創業の精神にしたがって銀行の発展に尽くした。嫡孫で、文化人であった第3代頭取の岡野喜一郎は、1975年(昭和50年)創立80周年を記念して、創業の精神に基づく5つの「駿河精神」を制定したが、第一番目が「奉仕の心をもち、無駄を省いて、有用なものに財を使う(勤倹貯蓄の精神)であった。そして嫡曹孫で、現社長の岡野光喜は創業の精神を実現し、常に地元のお客様のお役に立てるコンシェルジュバンクを目指して、21世紀を進んでいる。
 
二宮金次郎の教えを実践することで誕生した銀行が150年に渡り静岡県と神奈川県の経済を支えているのだから、偉人から学ぶことが、いかに価値があり大事なことであるかを教えてくれているといえよう。


文責 田宮 卓 

参考文献
村橋勝子 「カイシャ意外史」 日本経済新聞社
日本経済新聞社 「私の履歴書 経済人2」日本経済新聞社
谷沢永一 「危機を好機にかえた名経営者の言葉」 PHP
日本経済新聞社 「経済人の名言・上」 堺屋太一 監修
三戸岡道夫「二宮金次郎から学んだ情熱の経営」栄光出版社
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  1. 2011/05/05(木) 14:12:39|
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