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偉人のエピソード逸話集

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アステラス製薬創業者

山内健二(やまのうち・けんじ)略歴
1899年~1969年(明治32年~昭和44年)山之内製薬(現・アステラス)創業者。兵庫県加古郡(現・加古川市)に農家の五男として生まれる。大正9年、大阪貿易語学学校卒業後、高木商会へ入社。大正12年、大阪市西区に山之内薬品商会を創立。「ゲリゾン」、「アルバジル」などをヒットさせる。昭和15年、社名を「山之内製薬」とする。69歳で没。

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平成21年12月27日
題名:「終身雇用崩壊とともに失われたもの」
 


終身雇用が崩壊したと言われ何年経つだろうか、日本独特の終身雇用制度が一慨に良いとも悪いともいえないだろうが、終身雇用を支えていた大切な精神が失われてしまったことだけは確かなようだ。では終身雇用を支えていた精神とは何であろうか、山之内製薬(現・アステラス製薬)のある社員が山内健二社長の想い出を語ったエピソードからそのことを垣間見てみよう。

兄が昭和20年4月18日満27歳で戦死したので、残された母と二人で、泣き泣き野辺の送りをすることになった。医師、市役所の手続きも終り、葬儀屋に出かけた。ところが、(棺桶)がない。当時は空襲の最も激しい時であり、材木がほとんど手に入らない状態で「材木を持って来れば棺を造りますから」と断られてしまった。一時途方に暮れたが、思い直して心あたりを一日尋ねて廻った。しかし、材木は手に入らなかった。その時、本社前の空地に建物を解体した古材木があったことを思い出し、翌朝自転車にリヤカーをつけ、本社に行った。その日は日曜日であったので当直の社員がおらず、玄関口で階段に腰をかけて思案に暮れていた。

すると二階から人が降りてきたと思うと山内健二社長であった。「休日なのになぜ出勤したのか、大分疲れているようだが・・・」と優しく声をかけられた瞬間、今までの緊張が一挙に崩れた。不覚にも涙が出てしまい、ようやく気を取り直して兄が前日亡くなったが、納棺することが出来ないので、やむを得ず会社へ古木材を頂に来た事情を話すと、私の肩に手をかけて慰められながら力強く励まされ、私と一緒に古材の山の中から、特に新しい平板や角材を選んでリヤカーまで運んで下さった。山ほどの古材がリヤカーに積まれた。さあ、これで納棺が出来ると、心から社長にお礼を述べて帰る間際に、呼び止められ、当時二階にあった社長室に来るように言われた。

部屋に入ると、社長は自からお茶を入れられ、飲むようにすすめて下さった。社長は机の上の真白な紙を広げ、上着のポケットから取り出された札入れを逆さにして、紙幣や硬貨を全部出すと丁寧に紙に包まれた。そして「これは少ないが、仏前へのお供えと何かの足しにしなさい。」と私の固辞するのを構わず両手で手渡たされ、これからは亡兄の分まで元気で長生きし、一生懸命に頑張るようにと重ねて励まして下さった。おかげで無事に亡兄の野辺の送りを済ますことができた。この時飲んだお茶の熱くおいしかったことと、社員の悲しみをともに悲しんでいただいたこと、力強く励ましていただいたことなど、昨日の出来事のように有難く想い出す。私の青春時代の悲しい想い出の中でも、山内社長の恩情は生涯忘れ得ない想い出として残っている。

終身雇用が守られていた時は、経営者は社員を家族同然に大切にし、生涯社員の家族と生活を守るという気持ちを持っていました。だからこそ社員も、この社長のために頑張ろう、この会社で骨を埋めるつもりで頑張ろうと思い仕事をしていました。経営者や会社と社員の間にはそういった信頼関係があったからこそ終身雇用制度も保たれたのではないだろうか。

今は、経営者は業績が悪くなれば直ぐに人員整理をします。好きこのんでする人はいないであろうが、逆に業績が悪いのに人員整理をしないのは経営者のエゴといったような風潮さえあります。そこには社員を大切にする精神や社員の家族や生活を守るといった精神が失われているような気がします。そして社員も会社から明日にでも解雇を言い渡されるかもいれないという状況であれば、とても愛社精神というかこの会社のために頑張ろうという気持ちにはならないであろう。社員のモチベーションも求心力も低くなるので会社の組織力はますます弱くなります。これでは会社も社員も不幸です。
今一度終身雇用の良さを見直してみるべきではないだろうか。


 
文責 田宮 卓
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  1. 2009/12/27(日) 12:25:22|
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